訪問介護事業を運営するうえで、人件費は経費の中でもとくに大きな割合を占めます。人件費が高すぎると赤字につながり、逆に削りすぎるとスタッフが離職してサービスの質が下がるリスクがあります。本記事では、訪問介護における人件費の目安や削減のポイント、削減のデメリット、資金繰りを改善する方法について解説します。
訪問介護の人件費率の目安
訪問介護の人件費は、他の介護サービスと比べて高い水準にあります。経営を安定させるには、まず自事業所の人件費率がどのくらいの水準にあるかを把握するのが大切です。他のサービスと比べると高い水準
厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査結果の概要」によると、訪問介護の人件費率は72.2%です。通所介護(63.8%)や介護老人福祉施設(65.2%)と比べても高く、人が直接サービスを提供する事業の特性が表れています。訪問介護員が利用者の自宅に出向き、身体介護や生活援助を行う形態のため、専門性のある人材への人件費が高くなりやすい構造があります。黒字と赤字では9ポイントの差がある
公益社団法人全国老人福祉施設協議会の調査では、黒字施設の平均人件費率は60.9%、赤字施設では70.3%と約9ポイントの差があります。人件費率が70%を超えると赤字経営に陥りやすい傾向があり、70%を意識した管理が求められます。なお、人件費には基本給や賞与、各種手当のほか、社会保険料の事業主負担分(給与額の約15%)なども含まれるため、給与だけで人件費を把握しないよう注意が必要です。人件費の効果的な削減方法
人件費の削減は、給与を下げたり人員を減らしたりするだけではありません。業務効率化や人員配置の工夫によって、サービスの質を落とさずにコストを抑える方法があります。まずは現場への影響が少ない手段から取り組むことが大切です。業務効率化で残業代を削減する
タブレットを使った介護記録のデジタル化や申し送り方法の見直しは、日々の残業代の削減に直結します。手書きの転記作業をなくすだけでも、スタッフ一人あたりの業務時間を大幅に短縮できます。またAIを活用したスケジューリングツールで移動時間を短縮し、効率的な訪問体制を整える事業所も増えています。残業を減らすのは、スタッフの負担を軽くすることにもつながるため、離職防止の観点からも効果的です。非常勤スタッフの活用と人員配置の見直し
利用者の訪問が少ない時間帯に常勤スタッフを配置し続けると、人件費が無駄にかさんでしまいます。訪問件数に合わせて非常勤スタッフをうまく組み合わせると、必要なときに必要な人数だけ稼働できる体制を整えられます。また、処遇改善加算を適切に取得すると、国からの補助を活用しながらスタッフの待遇を維持するのも経営の安定につながります。人員を見直す場合は、介護保険法で定められた人員配置基準(訪問介護員は常勤換算2.5人以上)を下回らないよう注意が必要です。